ナダレにノッて

今、景気はこれから後退すると言われていますが、これは、私たちにとってはもっとも好ましいシナリオです。私たち-つまり私たち読む側(リーダー)にとって、私たち消費者にとって、そして、新しいメディアメーカーとしての私たちにとって。

印刷メディアの世界ではこれからもデジタルメディアの及ばない大規模な広告市場が維持されるでしょう。しかし新聞などの、印刷メディアにおけるニュースは、 純粋に経済面だけで話をすれば落ち目です。長期的には印刷物としての新聞の流通モデルは、淘汰されていくでしょう。私のお気に入りのこちらの記事 が、その理由を説明してくれています。

「…基本の経済学の教室に戻ったつもりで、思い出してください。競争市場ではすべてのモノの価格は常に限界費用に近づくよ うに動きます。これは、考えてみれば分かることです。競争状態が続けば利益は圧迫されます。しかし生産者は赤字を出しながらモノを売ることは出来ません。また、それまでの投資や固定費用などを価格に反映させることも難しい。…というわけで、すべてのモノの価格は限界費用に近づくのです。この理論は多くの人 に受け入れられていますが、また多くの人に誤解されています」

音楽やニュースの世界はまったく新しい生産、流通そして販売のシステムに向き合わざるを得なくなりました。消費者は、この新しい状態をすでに受け入れています。しかし業界はまだ、昔のビジネスモデルという船で現在の混沌状態に漕ぎ出そうとしているようです。

泣き言。恨み節。

もし未だに新聞を無料で印刷していながら(ヨーロッパの一部では慣習となっています)、それをオンラインで「開放」することに文句を言っている御仁がいれば、そしてさらにそちらの方が保守的な強欲さからニュース・アーカイブへのアクセスをブロックし、これまでオンラインの閲覧者数向上に貢献してくれていた相手を大騒ぎして訴えていたりするならば、もうとっとと引退していただくしかありません。

もう一度申し上げますが、私たち(読む側)は今まで、ニュースというものにお金を払ったことなどありません。これまで私たちが払ってきたのは、新聞に使われる紙の対価であり、そしてもはや紙は不要な時代となりました。ニュースの「生産」についての費用はこれまでも主に広告料で賄われていたのです。

こんなことは周知の事実です。そうでありながら、ごちゃごちゃとうるさいメディアのドンたちは 必死にこれを隠そうとしています。観念して、オンラインの世界で新しい道を模索するのではなく、デジタルの世界のチェ・ゲバラを責め立てているだけです。各印刷メディアのセールス担当者が、印刷物の失墜を恐れてオンライン広告の世界を妨害しようとするのも、共感できないことではありません。売り上げは伸び悩み、変化は常にストレス、そしてドンたちはゆったりとただ座っているだけ。

「読めてない」企業

私がずっと理解できないのは、多くの企業がオンラインの予算をケチりながら、印刷媒体の広告に未だに莫大な費用を注ぎ込んでいることです。マーケティング担当者は、今までどおり札束のわんさと入ったスーツケースを、印刷広告に投げ込んでおられます。その大事なおカネの吸い込まれる先、印刷メディアなんて、もはや過去の遺物です。印刷メディアは有益で、知識の宝庫だなんて思っている人がいたとすれば、おそらくそれは過去の名残に縛られているだけでしょう。皆様もそろそろお気づきではないでしょうか。新聞が役に立つ時なんて、喫茶店で大あくびを隠すときとか、ペンキを使うので床に敷くときとか、雨の日に丸めて靴に詰めるときくらいだということに。

となると、あとは時間の問題です。企業広報担当者の方々は、いつ方向転換の必要に気付いてしまうのでしょうか。オンライン広告市場は毎年驚くべき スピードで拡大しています。(どうしてMicrosoftがあれほど熱心にYahooを買収したがっているのかお分かりになりますか)そして米国ではオンライン広告市場は昨年1年間で18%も成長しました。その一方で、印刷メディアにおける広告市場は過去50年で最大の危機を迎え、90%に縮小しています。

真の問題

新聞購読者数の低迷とともに沈み行く印刷広告市場、というイメージは老舗のメディア・ハウスにじわじわと恐怖感を植えつけているはずです。そして若いオンライン・ニュース読者と未だに紙面を読んでいるヨボヨボの読者たちというコントラストを見れば、変革に踏み切る決断は容易になるはずです。ところが、ここに一つ、ご紹介しなければならない意外なデータがあります。

  1. The New York Timesのオンライン読者は1,300万人
  2. The New York Timesを紙媒体で購読する読者は160万人
  3. The New York Times社の年間売り上げは4億8,400万ドル
  4. その中で占めるオンラインでの売り上げは5,100万ドル

つまり、オンラインでは紙媒体の10倍の読者がいるにも関わらず、読者一人当たりで計算した売り上げではオンラインは紙面の100分の1ほどにしかならないのです。一体何が起こっているのでしょう。

悪いのは誰か

クリックされなかった広告には料金を払う必要がないという考え方は、間違っています。実際CPMとは、大変にばかげたシステムです。しかし今私たちを待ち受けている悲惨な世界に責任があるのはもっとお粗末なこちらの方々です。

  1. 何百万ドル級のオンライン広告ビジネスでたった1社(Google)があぐらをかいているのを、なんとなく許してしまう傲慢な広告主
  2. 50年代のTVスポット広告の頃の顧客イメージを未だに引きずっているような、残念な脳みそをお持ちの宣伝担当者
  3. 拒食症にかかっているのか、増えないオンライン広告予算
  4. マーケティングのリターンをまったく気にしないCFOの方々
  5. 新聞社オンライン広告部門の創造性にかけるショボ担当者
  6. 多分「インタラクション」という言葉を知らないコンサルタント
  7. ニューメディアにおける新しくパワフルなプレーヤーの不在

でも、望みはあります。予想されている不況がこれから続けば、何ヶ月か後にはおそらく、それぞれの企業は効率が悪くて古臭い、一方通行的な広告に大事な予算をつぎ込む前に手を止め、目に見える現代のマーケティングに向き直ってくれることでしょう。そうなれば、機敏な、若い世代の広告プレーヤーたちは、ご老体の、一方通行メディアの世界のダンディたちを追い越していくようになるはずです。だから今、私たちは、クレイジーなデジタル・サーファーとして、 叫ぶのです。“Ô avalanche! Emporte-moi dans ta chute!(雪崩よ、お前はその転落の中に私を連れ去ろうというのか)?”

そして、ご参考までに、こちらにそのお手本を置いておきます。

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