ユーザビリティとブランディング

企業のウェブサイトというのは往々にして顧客との最初の、そして緊密な接点となるものです。その点で、ユーザビリティとオンライン・ブランディングはどのビジネスにも重要です。

企業やブランド・ポートフォリオにとってウェブサイトは名刺やパンフレット、製品、パッケージや、オフィスの所在地などと同じくらい重要です。ブランディングが企業価値を大きく影響するようになり、ユーザビリティは数字の面でウェブサイトの善し悪しを左右します。しかしながらウェブデザインとユーザビリティはしばしば矛盾するのです。今回は、私たちがどのようにその矛盾を解決しているのかをご紹介したいと思います。

ユーザビリティとオンライン・ブランド・エクスペリエンス

ウェブサイトはインフォメーション・ツールです。そして、それ故にウェブサイトは一定のルールのもとに構築されています。企業サイトでは使いやすく、役に立ち、そして印象に残るような強力なブランドによるブランド・エクスペリエンスを残すことが重要です。しかし成功しているウェブサイトの中にはミニマムなデザインしか施されないものがよく見られます。(例えば、今年すい星のように現れたcraigslistをご覧下さい)デザインをなくす、というのはユーザーを機能のみに集中させる一つの確実な手段です。デザインは時に、悪いオンライン・エクスペリエンスを引き起こし、そして(信じがたいことですが)ブランド・エクスペリエンスにまで悪影響を及ぼすことがあるからです。ウェブサイトにおいては、好ましいグラフィックデザインが(ブランド)エクスペリエンスにとって逆効果をもたらすことがあります。

「ブランディングとは、顧客にロゴや商品名を覚えさせるだけのものではない。ブランディングとは、顧客が商品や、サービス、企業に触れた時に一定の感情(例えば、成功感、幸福感、安堵など)を沸き起こさせるようなつながりを作り出すことだ。(中略)ユーザーがある一定の目的を持ってウェブサイトを訪れるものと仮定した時、その目的を達成することができることが好ましく、そういった直接的なエクスペリエンスほど、望ましい」 —Branding and Usability, J・スプール 1996(!)

ブランド・エージェンシーはウェブ屋ではない

もちろんメディアに合ったブランディングがウェブサイトの機能を損なわずに全体的な企業価値を高めることもあります。(Google, Ebay, New York Timesなど)残念なのはブランド・エージェンシーの人々は、インタラクティブな場での経験が浅く、「メディアに合ったブランディング」というものを考える時に、まだ足下が危ういということです。東京で最近感じたことは、大手のブランド・エージェンシーですら「インタラクティブ・プロダクツには力不足である」と自ら認めているということです。2000年に私はヨーロッパの大手企業でインタラクティブ事業関連部門の立ち上げに携わりましたが、そのときも、ブランディング経験20年以上のシニア・コンサルタントを相手に(そして彼らは私が一緒に仕事をさせてもらった人々の中でも最も才能にあふれた人々でしたが)以下のようなこと納得してもらうことに苦心しました。

  1. 根本のところで言えば、オンライン・ブランド・エクスペリエンスとはユーザビリティの話である。
  2. ユーザーを喜ばすことができるのはアニメーションではなく、良い機能とレスポンスが得られたときだ
  3. ロゴがスクリーンの上で踊っていてはならない
  4. Flashは問題になりこそすれ、解決策にはならない

ビッグ?・オア・スモール?

イスをデザインする時には、静力学や人間工学に基づいて作業する必要があります。新時代のビルだって、もしフロアをつなぐ隠し廊下や階段、ドア、そして窓がなければ何の役に立つでしょう。ウェブサイトを、機能的な、洗練された形のプロダクトとしてデザインするときも、作る人間はウェブサイトがどのように機能するのかを正確に知りつくした上で仕事をしなければなりません。小規模のブランド・エージェンシーにこのようなノウハウを求めるのは難しいことでしょう。大手には、インタラクティブ関連部署があって、ブランド・クリエイションの初期から、スクリーンアプリケーション(携帯やPDA、ウェブサイトなど)のことを考えているひとがいるはずなのです。

ウェブ屋はブランド・エージェンシーではない

もちろん、ウェブデザイナーだって、この9年間でブランディングやユーザビリティについて多くのことを学んできています。しかし、それでもウェブ・エージェンシーに、一貫したブランディングの深みや複雑性を完全に理解していることを期待するのも難しいものがあります。もちろん、そういった領域に長けたデザイナーもいます。しかしまた多くの企業がオンライン上では、CI(コーポレート・アイデンティティ)的に壊滅的な姿をさらしているというのも現実です。でも、しかたのないことです。彼らデザイナーたちの役割の第一は、きちんと機能するプロダクトを生み出すことであり、名刺やレターヘッドと一貫性のあるプロダクト作りではないからです。

インタラクティブ・ブランド・コンサルタント

常にテクノロジーへの愛憎を内包するという創造性の性質故にユーザビリティは常にグラフィックデザインと矛盾します。まだ目新しい職種に「インタラクティブ・ブランド・コンサルタント」というのがありますが(私もその一人です)、彼らはテクノロジー、グラフィックデザイン、ブランディングとユーザビリティの矛盾関係を解決するお手伝いをします。ユーザー、消費者、そしてクライアントの立場に立って。時に大変に難しい仕事です。でも、難しいからこそ楽しいのです。

新しいものではありません

そして改めて申し上げますが、これは何も目新しいことではありません。優れたプロダクト・デザインとは何でしょう?常に、今までも、そしてこれからも、優れたプロダクト・デザインとはテクノロジー、ユーザビリティそして美学の矛盾を解決することのできる知性の上に得られるものです。好きな車があればそれを思い出してください、ヤコブセンのスワンチェアや、表参道にあるヘルツォーク&ムーロンのプラダビルだって同じです。

ウェブデザイン=プロダクトデザイン

もうお気づきになっているでしょうか。私はここまで「プロダクトデザイン」という言葉を使ってきました。ウェブデザイン、インタラクティブデザイン、そしてインフォメーションデザインは全て、まさしくプロダクトデザインであるからです。そしてこの仕事をこなすにはエンジニアであることが必要です。インフォメーション・エンジニア、インフォメーション・デザイナー、インフォメーション・アーキテクト。そうでなければ、少なくとも、インフォメーション・メカニック。一度申し上げましたが、簡単な仕事ではありませんが、その困難を一度解決することができれば、大きな喜びを得ることができます。これがインフォメーション・デザインの醍醐味です。難しい問題を簡単にすることの悦びなのです。

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